恋口の切りかた
宗助の話によると、青文は俺からの書状を受け取っても特に怒ったり驚いたりもしなかったようで、

あいつのことだから俺のこの行動すらも読んでいたのかもしれなかった。


青文は、

どうせ今すぐに国政に口を出されても困る。

こっちはうまくやっておくから見聞を広めてこいと、そこは理解のある返事を寄越してきたのだが──

理解のないことに、万一のことがあっては困ると護衛をわんさと送り込んで来やがった。


こっちはせっかく留玖との時間を楽しんでいたのに、冗談ではない。


俺は行く先々で追っ手を振りきり、宗助に足止めさせて、

こうして国が近づいた今も、留玖と二人きりの旅を楽しんでいるというわけなのだが──


「なんだよ、それとも留玖は、俺と二人きりでいたくねェのかよ」

俺が拗ねたように布団の上に座ったままくるりと後ろを向いて見せると、留玖は慌てた声を出した。

「そ、そんなことないよ。
私だって、エンと二人きりで……いたいよ……」

ちらりと横目で窺うと、
言いながら、白い頬が見る見る真っ赤に染まって、留玖はうつむいた。


いまだにこういう照れ方をするところが、かわいいよなァ。


「だったら、あいつらはジャマだろ?」


俺は後ろから留玖を抱きしめて、耳元で囁いた。

白い耳たぶまでが真っ赤になる。
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