恋口の切りかた
円士郎が殿様になって、役目が空いてしまった盗賊改め方の長官には

二年前のあの事件で功績があったということで、あの後すぐに神崎帯刀が就いた。


円士郎はもともと、自分が結城家の家督を継いだ後は帯刀に長官をさせようと考えて、神崎家の屋敷を役宅にしていたようで、

盗賊改め方の役宅はそのまま今も神崎家となっている。


事件の後、盗賊改め方には新たに配属された人間がいて、

驚くべき事に、それは青文を目のカタキにしていた鎖鎌の兵衛だった。


金髪緑眼の御家老様はあの時、私を先に行かせた後、

もともと士分だったという兵衛に、
この国でのお家の再興と彼に役目を与えることを条件に取り引きして、事件から手を引かせたのだそうだ。

確かに、裏の世界で殺し屋などをやっていたのであれば、打ってつけの役目なのかもしれないけれど、

敵をまんまと懐柔して、まさかこの国の侍にしてしまうだなんて、さすがは操り屋ということなのだろうか。


無事に家の存続を認められた隼人は、

突然元殺し屋が同僚になって「有り得ねー」を連呼していた。
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