恋口の切りかた
事件の後──夜叉之助と冬馬の関係を知って、
跡取りを亡くした海野喜左衛門は冬馬を養子にと、父上に強く頼み込んだ
父上はそれを快諾し、冬馬は結城家を出て海野家の家督を継いだのだった。
養子に出ていく冬馬に、父上は
「儂は結城家と大河家とのいっさいの関係を断つと言ったが、海野家と大河家との関係にまで干渉するつもりはないぞ」
と、ニヤリとしながら告げて──
「冬馬、今日は風佳を置いて試合を見に来て良かったの?」
私は、
私と円士郎が江戸にいる間に祝言を挙げた、冬馬のご新造を思い浮かべながら尋ねた。
「そうだぜ。風佳は今、身重だろ?
そろそろ産まれる頃だって言ってたじゃねえか」
円士郎も眉を寄せて、
「医者の話ではまだ先とのことでしたので、大事ありません」
冬馬は優しい表情になってそう答えた。
「さて、そろそろ試合を始めるが、二人ともいいかな?」
試合に立ち合うために登城してきた虹庵先生が、私たちに声をかけて、
私と円士郎は視線を交わし合って、「はい」と頷いた。
跡取りを亡くした海野喜左衛門は冬馬を養子にと、父上に強く頼み込んだ
父上はそれを快諾し、冬馬は結城家を出て海野家の家督を継いだのだった。
養子に出ていく冬馬に、父上は
「儂は結城家と大河家とのいっさいの関係を断つと言ったが、海野家と大河家との関係にまで干渉するつもりはないぞ」
と、ニヤリとしながら告げて──
「冬馬、今日は風佳を置いて試合を見に来て良かったの?」
私は、
私と円士郎が江戸にいる間に祝言を挙げた、冬馬のご新造を思い浮かべながら尋ねた。
「そうだぜ。風佳は今、身重だろ?
そろそろ産まれる頃だって言ってたじゃねえか」
円士郎も眉を寄せて、
「医者の話ではまだ先とのことでしたので、大事ありません」
冬馬は優しい表情になってそう答えた。
「さて、そろそろ試合を始めるが、二人ともいいかな?」
試合に立ち合うために登城してきた虹庵先生が、私たちに声をかけて、
私と円士郎は視線を交わし合って、「はい」と頷いた。