恋口の切りかた
父上と虹庵が私たちからやや離れた場所に立つ。

しん、と見物人が静まり返った。




あの冷たい雨の降る秋の日、

私に幸せを奪われたと憎悪の目を向け、
好きだと言った人を自らの手で傷つけて、死を選んだ少女。

あんな悲しみを二度と生み出したくない。


あれから自分は、少しは強くなれただろうか。




私は円士郎と向かい合って立って、

手にした木刀を構えた。


円士郎も私と同様に、一刀を構えて私と対峙して、



「負けないから」

私は円士郎に向かって微笑んだ。


「ああ、俺も今日は手加減しねえ」

円士郎が、私の大好きな不敵な笑いを浮かべて見せる。



ふうわり、ふうわりと、

風に乗って桜の花びらが飛んできて、
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