恋口の切りかた
まだ信じられないでいる私の手を、円士郎は両手でそっと包み込んだ。


「留玖、これでお前にもまた家族ができる」


私はおそるおそる上半身を起こして、

自分のお腹を見下ろして、


円士郎が、そっと私を抱き寄せた。


「私に……家族が……」


「ああ、ここにいるのはお前と血の繋がったお前の子だ。

もちろん俺の血を引く子でもあるわけだけどよ。

俺とお前は、こいつを通して今度こそ本当の家族になったんだ──」


私のお腹にそっと触れて、耳元で円士郎が囁いて、


視界が滲んだ。


こみ上げた涙が、後から後から溢れてほっぺたを伝い落ちてゆく。
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