恋口の切りかた
「エン……」


呟いた私の唇と、円士郎の唇が重なって、


私の頬を落ちていく涙を、温かい円士郎の手が拭って、


「留玖、お前、自分の名前の意味を知ってるか?」


円士郎は私の頬を撫でながらそう尋ねた。


「剣術の剣っていう意味でしょう……?」

優しく頬に触れる円士郎の温かな手に目を閉じながら、私は名前をもらった時のことを思い出した。


「それもあるけどな」

円士郎は私の肩をぎゅっと抱きしめて、
私は彼の腕の中に閉じこめられて、


「お前を側室にしたいって頼んだ時に、親父殿から聞かされた。

留玖の名前の『玖』って漢字は美しい宝の石って意味だ。

『るき』って読みは、『剣』の意味だが──お前の名前、漢字の『留玖』は『宝を留め置く』って意味なんだってよ」


宝を留め置く──


私は彼の顔を見上げた。


「お前は俺の宝だ。
俺はお前を絶対に手放さねえから」


優しい声と微笑が私を包み込む。


「ずっとそばにいろよ、留玖」


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