恋口の切りかた
自分の名前にそんな意味もあったなんて、今日まで知らなかった。

私は胸がいっぱいになって何も言えなくて、
また涙がこみ上げた。


ぼやけた視界の中で、円士郎が微笑んだ。


「なあ、留玖」


窓の外の桜の木を見つめながら、円士郎が言った。


「お前、今年で二十一になったよな」


「え? うん」


彼の腕の中で、
その胸に体重を預けて、
私は頷いて、

ふふ、と円士郎が嬉しそうに笑った。


「俺とお前が出会ったのはお前が八つの時だ。

それから十三年経った──」


円士郎は私の頬に、そっと口づけて、


「お前があの村にいたのは十二の年までだ。

俺とお前は、それよりも長い時間、一緒にいる」


いつか桜の下で言ったのと同じようなことを口にして、円士郎は私を見つめた。


「俺が、お前の人生の中で、一番長くお前と一緒にいる」


私ははっとした。


「本当だ……」
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