恋口の切りかた
「わかったから、その人をはなせ!
親父のせいであんたが下手人になったんなら、なおさらなんとかしてやりてえし」

何とか説得しようとする漣太郎に、

「そう申されても、まだ子供のご子息にはなにもできんッ!」

現実をつきつけるように、

堀口は刃をりつ様の首すじに押しつける。

「晴蔵殿を! ご当主を今すぐここへッ!」


漣太郎が唇をかんだ。
だめか、と小さくつぶやくのが私の耳に聞こえた。


「留玖、二人でやるぞ」

低い声で、漣太郎が私にささやいた。


「このままじゃ、りつ殿がやべェ。助けるにはあいつを斬るしかない」

「うん」

私はうなずいた。



漣太郎の右手が、刀の柄をにぎる。


「漣太郎殿! おやめなんし!」


それを見て声を上げたのは、りつ様だった。

「手出しはなりんせん! 漣太郎殿は、結城家を継ぐお方!
お父上のためにも、このようなことに絶対に関わってはなりんせん!」


ぐっ……と、漣太郎が小さくうめいて動きを止めた。
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