恋口の切りかた
【漣】
俺は子供だ。
目の前の男にそう言われ、りつ殿にいさめられて──俺はどうしようもないほどに自分の無力さを思い知らされた。
なんだよ、いつもエラそうにしてるだけで。
こんな肝心な時に、俺は何もできないのかよ──ちくしょう!
相手の要求どおり、親父殿に知らせることも考えたが、だめだ。
こんなときに、もどってこいと火急の使いを送れば、間違いなくあやしまれて
ヘタすりゃ伊羽って城代家老まで一緒にくっついて来ちまう。
こんな現場を見られたらどうなるか……さすがにそんな危険を冒す気にはなれない。
動けない俺の横で、留玖が一歩前に出た。
「う──動くなッ!」
あわてて、堀口とか言う男がわめいた。
かまわず、留玖はさらに相手との間合いをつめる。
むりだ! とそれを見て俺は思った。