恋口の切りかた

「うむ、実はな──」

その父上は、うす暗い行灯の光の中で、いつものようにごりごりとアゴをこすって、


「儂がやつを推挙したと堀口が言っていたことはな、

べつに先ほど、伊羽殿の前でしゃべってくれてもかまわなかったんだなァ、これが」

と、言った。


「はァ?」

「──どころか、伊羽殿の屋敷に火急の知らせでも入れてくれりゃ、それが一番手っとり早かったんだが」

「はァッ!?」


漣太郎が耳を疑った様子で聞き返し──、

父上はこれもいつものようにパシンと膝を打って、








「今回、儂と伊羽殿はグルだ」

と、あっけらかんとした口調で言った。



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