恋口の切りかた
「あの覆面野郎と親父がグル!?」

漣太郎が目を剥いた。

「って──待てよ、どういうことだそりゃ!
親父が、あの覆面を殺す下手人に堀口を選んだんじゃねェのか!?」


声がでかいわばかもの、と父上はおさえたするどい口調で言った。

「いいか、お前たちはすでに巻きこまれた形だから話すが──これから話す内容は他言無用。
誰かに知れたならば結城家も伊羽家も消えると考えておけ」

「な──」


さすがの漣太郎も口をつぐみ、私とりつ様は緊張して父上の言葉を待った。


「ふむ、何から話したものか……
とりあえず今、漣太郎が言ったことだがな」

父上はニヤリと笑った。

「まさに、伊羽殿は自分を殺す相手を、儂に選ぶようたのんだんだな」

「ンなアホなマネするやつがいるのかよ」

漣太郎が、なんとか低くたもったという調子の声で言った。


私もびっくりしてしまった。

そんなことをたのむ人がいるのだろうか。


父上はさも愉快そうにふふん、と笑った。

「儂は、伊羽殿とも何度か手合わせして力量のほどは心得ている。
──ということは、だ。

闇討ちにあっても『伊羽殿が殺されないような』力量の下手人を選ぶことができる、というわけだ」
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