恋口の切りかた
あ……そうか。

言われてみれば、確かにそのとおりだと私は納得した。


「もともと今宵、堀口に始末させようとしたのは、『伊羽殿と一緒にいた二人』のほうでな」

父上はそう言って、

「今回のことは、伊羽殿に反感を持つ勢力の一掃(いっそう)と、家中のすす払いのために儂と伊羽殿が画策したことだ」

と、私も漣太郎もまったく知らなかった真実を教えてくれた。



話によると──



新しく家督を継いで城代家老になった、伊羽家当主の伊羽青文という人は、かなりの切れ者らしく、

今回、疎ましく思う家中の一派が密かに暗殺をたくらんでいることが判明した。


伊羽様は自分をねらうやからの存在を知ると、恐れるどころか逆にそれを利用することを考えたらしい。


一計を案じた伊羽様は、自分をねらう一派の闇討ち決行の日に合わせて、城内の腐敗(ふはい)した家臣を一掃しようとした。
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