恋口の切りかた
「伊羽殿はこう話を持ちかけてきた。

自分には謀(はかりごと)や他人をあざむく才──だまし合い化かし合いの才はあるが、実行力の才には欠けると。

儂にその欠けた部分を補ってほしいとな」


漣太郎は、父上の着物にポツリと付着した返り血をマジマジと見つめた。


「親父は──何をやってたんだ……?」


「実行力の提供だ」




それは……つまり──。




「堀口が伊羽殿を斬れずに逃げた後、堀口のしわざに見せかけて──、

今宵は、儂が本当の闇討ちを行っていたのだ」

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