恋口の切りかた
「うつわ……?」

漣太郎は眉間にしわを作った。
左様、と父上はうなずいた。

「当主にはそれなりの器──器量が求められる。

今宵のお前の判断、ふるまい、未熟ながら結城家当主にふさわしい器量を垣間見る働きだったぞ。

何より、あの伊羽殿に傑物と評価させるとは……我が息子ながらあっぱれ! というところだ」

「傑物……」

漣太郎は小さくつぶやいて、父上の顔を見上げた。

「……親父は……?」

「うん?」

「親父は、どうなんだよ?」

漣太郎は唇をかんで、視線を落とした。

「オレは親父から、そういう評価を受けたことはねえぞ……」

父上はあんぐりと口を開け──

「──ばかモンが!」

再び盛大に吹き出した。

「自分の息子……しかもお前のような傲慢不遜な息子に、『傑物』だの『天童』だの言うバカな父親があるか!」


漣太郎は大きく目を見開いた。
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