恋口の切りかた
父上の話とあわせると、五人の内、伊羽様と一緒にいた二人を堀口が斬って、
残りの三人を父上が斬ったということになる。



どう考えても、私が斬った堀口は切腹死体には見えなかったハズだけれど……どんな手を使ったのか──。


これが、父上と伊羽様の筋書きどおり、ということなのだろうか。

まさに、敵対勢力を一網打尽にした形だ。


罪人が武家屋敷の界隈に逃げ込んだ、なんて話を聞いていた時には、
まさか同じ日の夜に、こんな大事件が進行することになるなんて思いもしなかった。

しかも私も漣太郎も、そんな事件の裏側の部分にしっかり関わっちゃったんだもんなぁ。


農民で一生を終えていたら、たぶんこの先もずっと関係のない世界だったんだろうけど。





これが武士の──大人の世界ってものなのかな。

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