恋口の切りかた
「おい、留玖。手合わせするぞ」
その日も私は漣太郎に声をかけられて、他の門下生たちが注目する中、道場で木刀をにぎって漣太郎と向かい合い──
──今回は私が負けた。
む~、くやしい。
っていうか……
何だか昨日までにくらべると、漣太郎の動きは何かがふっきれたような、キレのあるものに変化した気がした。
私に木刀をつきつけたまま、漣太郎はいつものように
不敵に、
不遜に、
強気に笑って
「お前には絶対負けねぇからな、留玖。この道場はオレが継ぐ」
と、言い放った。
私のことを人を斬った経験者だと言ったあの時の、私に対する引け目を感じているような漣太郎はもういなかった。
その顔を見ているうちに、私は自分の心にもこれまでにない思いが芽生えていることに気づく。
「私だって」
私は皆の前で漣太郎に言い返した。
「兄上には負けない。父上に認めてもらうことが、養子にしてもらった恩義に報いることだから」
あの父上に──認めてもらいたい。
女だとわかっても受け入れてくれた父上の期待に応えたい。
漣太郎が少し驚いた顔をして、「上等」と言って笑った。
私も、えへへと笑う。
その日も私は漣太郎に声をかけられて、他の門下生たちが注目する中、道場で木刀をにぎって漣太郎と向かい合い──
──今回は私が負けた。
む~、くやしい。
っていうか……
何だか昨日までにくらべると、漣太郎の動きは何かがふっきれたような、キレのあるものに変化した気がした。
私に木刀をつきつけたまま、漣太郎はいつものように
不敵に、
不遜に、
強気に笑って
「お前には絶対負けねぇからな、留玖。この道場はオレが継ぐ」
と、言い放った。
私のことを人を斬った経験者だと言ったあの時の、私に対する引け目を感じているような漣太郎はもういなかった。
その顔を見ているうちに、私は自分の心にもこれまでにない思いが芽生えていることに気づく。
「私だって」
私は皆の前で漣太郎に言い返した。
「兄上には負けない。父上に認めてもらうことが、養子にしてもらった恩義に報いることだから」
あの父上に──認めてもらいたい。
女だとわかっても受け入れてくれた父上の期待に応えたい。
漣太郎が少し驚いた顔をして、「上等」と言って笑った。
私も、えへへと笑う。