恋口の切りかた
物売りは若い男だった。

被り手ぬぐいに法被(はっぴ)、半纏帯(はんてんおび)をしめ、そして下には股引(ももひき)をはいた軽快な格好だ。
職人や物売りにはよく見る服装だし、こんなのは問題ではなくて。

──手ぬぐいの下の頭。



その青年は──日の光に輝くような白金の髪の色をしていたのだ。



金色の髪の毛なんて見たこともなかった私は息をのんだ。

よく見ると、若者は肌の色も透けるように白いし、顔の造形も鼻筋が通っていて彫りが深い。



「おや? 結城様の道場の門弟さんかな」

青年の顔を食い入るようにじぃーっとながめている私に気づいて、天秤棒の物売りさんは私のほうへ近づいてきた。


「あ……私はここの子供です」

私は今も稽古着のままだった。


「結城様のお子さんですか。可愛(かわい)い金魚はいかがですか?」

そう言って近くまで来て、青年は水路の向こう側でかついでいた桶を下ろした。



間近でその瞳を見て──また私は衝撃を受ける。

青年の瞳は、まるで翡翠(ひすい)のような美しい緑色をしていた。
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