恋口の切りかた
かぁああ──っと、私は再びほっぺた……どころか耳まで赤くなるのを感じた。


そう、そうなんだよぅ……。


男の格好をして、男に混ざって剣術に没頭するようになって、

私は「女として見られること」にさっぱり耐性がなくなってしまった。


だから昨日の金魚屋さんとか、今の円士郎みたいな態度をとられると、
頭の中で、こう──お祭りのひょっとこかお狐さんが踊っているようなことになってしまう。

……って、自分でも何言ってんのかわからないけど。


「ひ……酷いよ、朝から妹からかうなんて……」

「兄として心配してやってるんだろうが」

涙声の私に、円士郎は偉そうにそう言った。

うう……円士郎のイジワル。


何だっけ?

もともと何の話をしていたのかわからなくなっちゃったよ。


なんだかうまくごまかされてしまった気もするけれど……。


円士郎はニヤニヤしながら私を見つめていたが、
やがてふっと──優しい顔になって目を細めた。

「剣の腕は強ェのに、お前ってそういうとこあるよな」

「えっ……」


私はまた

どきん、としてしまって──


「で? 何だよ朝から大騒ぎしやがって」

大あくびをしながら円士郎が放った言葉で、ようやく何をしに来たか思い出した。
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