恋口の切りかた
【円】
兄として心配している──か。
そう口にしつつも、俺は何だか自分の言葉が白々しいような気がしていた。
俺の立場は留玖にとっての兄であり、
留玖は俺の妹だ。
それは、親父殿が留玖を養子にした時から決められた俺と留玖の関係だったが──
兄だ妹だと言いながらも、俺は未だに留玖のことを『妹』だとは見ることができていない──気がする。
じゃあ、俺にとって留玖は何なのかと問われると答えに窮(きゅう)するのだが……。
「金魚、七匹もいたのに──どこ行っちゃったのかな?」
その留玖は、今にも泣き出しそうな顔で
キラキラと朝日に輝く池をのぞきこんでいる。
俺は、昨日見た記憶の中の金魚の大きさと、
それから今、悠々と池の中を泳いでいる鯉の──
──口の大きさとを比べてみた。
どこ行っちゃったかなって、これは……。
「あんま言いたかねーけどよ……」
「いやっ、聞きたくない!」
この想像は留玖にもついていたようで、留玖は耳を両手でふさいで頭を振った。
「まあ、一飲みにできそうな大きさだったよな……」
「うあ……うあああ──」
留玖は目からポロポロ涙をこぼしながらへたり込んだ。