恋口の切りかた
うーん。

金魚一つで大騒ぎしたり泣いたり……このへんは普通の女の子だよなァ、と思う。
人を七人も斬った少女には見えない。

でも、彼女は殺しているのだ。


「食べないもん。鯉さんは金魚なんか食べないもんっ」

そう言ってポロポロ涙をこぼしている留玖が、妙に愛おしく思えて、

「わかった、わかった──」

俺はよしよしと再び留玖の頭をなでてやって、それから泣いている留玖をぐいっと抱き寄せた。

「やっ……え、エン?」

留玖は俺の腕の中で少しもがいた。
耳が赤くなっている。

「わかったから、泣くなって」

俺は、そう言いながら留玖の頭を自分の胸に押しつけた。

「う、うん……」

留玖がうなずく。


泣いてる留玖を見て、こうしたいと思ったのは──

妹を慰めたいと思う兄としての感情からなのか、



それとも──昨日の夜、あの後に俺が……



「食べてない、食べてない。きっと金魚はどっかにかくれてんだろ」

俺はそう言って、留玖の頭をなでてやって──





「これは、食べられちまいましたね」

昼過ぎに今日も屋敷を訪れた金魚屋は、留玖に無情な現実を告げた。
< 340 / 2,446 >

この作品をシェア

pagetop