恋口の切りかた
「いいですよ」
円士郎の言葉に金魚屋さんはうなずいて、
「今回はこちらにも責がありますし、お代は結構」
そう言って、再び桶の中から赤い魚を七匹、見つくろってくれた。
「ところで──昨晩、城下で事件があったのをご存じですか?」
帰り際、ふと思い出したように金魚屋さんはそんなことを言った。
「事件?」
私は首をかしげる。
「ええ、『辻斬り事件』です」
辻斬り──。
底冷えするような、嫌な響きだった。
見知らぬ人を殺す。
自分に無関係な罪もない人間を、無意味に殺す。
嫌な話だった。
私は、あの──大晦日に村を襲った強盗たちを思い出して暗い気分になる。
「おや? まだご存じない? 町ではエラい騒ぎになってますよ」
金魚屋さんは目を丸くした。
知らなかった。
そんなできごとがあったなんて。
今日は朝から金魚のことで頭がいっぱいだったからなぁ……。
「殺された者というのが、腕に覚えのある者のようでしてねえ」
金魚屋さんは、そう言いながら──なぜか円士郎を見た。
「斬った者も相当の使い手だろうと、町ではそんな噂で持ちきりです」
────?
何だろう……?
私も、横に立った円士郎の顔を見上げた。
すると、
円士郎はまた朝のように視線をそらして
「……物騒だな」
と、小さくつぶやいた。
「ええ。お気をつけて」
そう言って、金魚屋さんは去って行き──
私は何かもやもやしたような、そんな気分で円士郎を見つめていた。
円士郎の言葉に金魚屋さんはうなずいて、
「今回はこちらにも責がありますし、お代は結構」
そう言って、再び桶の中から赤い魚を七匹、見つくろってくれた。
「ところで──昨晩、城下で事件があったのをご存じですか?」
帰り際、ふと思い出したように金魚屋さんはそんなことを言った。
「事件?」
私は首をかしげる。
「ええ、『辻斬り事件』です」
辻斬り──。
底冷えするような、嫌な響きだった。
見知らぬ人を殺す。
自分に無関係な罪もない人間を、無意味に殺す。
嫌な話だった。
私は、あの──大晦日に村を襲った強盗たちを思い出して暗い気分になる。
「おや? まだご存じない? 町ではエラい騒ぎになってますよ」
金魚屋さんは目を丸くした。
知らなかった。
そんなできごとがあったなんて。
今日は朝から金魚のことで頭がいっぱいだったからなぁ……。
「殺された者というのが、腕に覚えのある者のようでしてねえ」
金魚屋さんは、そう言いながら──なぜか円士郎を見た。
「斬った者も相当の使い手だろうと、町ではそんな噂で持ちきりです」
────?
何だろう……?
私も、横に立った円士郎の顔を見上げた。
すると、
円士郎はまた朝のように視線をそらして
「……物騒だな」
と、小さくつぶやいた。
「ええ。お気をつけて」
そう言って、金魚屋さんは去って行き──
私は何かもやもやしたような、そんな気分で円士郎を見つめていた。