恋口の切りかた
次の日は、朝から雨だった。
「ねえ、昨日の夜、どこかに行ってた?」
気になって、私は朝食の後に円士郎に尋ねた。
きっと何か納得のできる答えが返って来るに違いない。
そう期待しながら聞いた私は、
「はァ? 何言ってんだ、留玖。ずっと部屋にいたぜ」
笑いながらそう言った円士郎に驚いた。
「えっ……で、でもさ……」
「どうかしたのか?」
円士郎が顔から笑いを消して、私に探るような視線を送ってきた。
「いや、なんでも……ないよ」
私は慌ててそう言うことしかできなかった。
何だろう。
円士郎は何かを隠している。
やっぱりもやもやを抱えたまま、午後になって、
そして今日も、遊水という名の金魚屋さんがやって来た。
雨に濡れるカキツバタの向こうから現れた彼は、今日は天秤棒を持っていなくて、代わりに傘を差していた。
「今日は金魚の様子を伺いに参りました」
そう言う遊水に、私が今度は変わりなく元気に泳いでいると告げると、
「そいつは良かった。ところで、知っていますか?」
彼は再び、不吉なその言の葉を口にした。
「例の辻斬り、昨晩もまたあったようですぜ?」
「ねえ、昨日の夜、どこかに行ってた?」
気になって、私は朝食の後に円士郎に尋ねた。
きっと何か納得のできる答えが返って来るに違いない。
そう期待しながら聞いた私は、
「はァ? 何言ってんだ、留玖。ずっと部屋にいたぜ」
笑いながらそう言った円士郎に驚いた。
「えっ……で、でもさ……」
「どうかしたのか?」
円士郎が顔から笑いを消して、私に探るような視線を送ってきた。
「いや、なんでも……ないよ」
私は慌ててそう言うことしかできなかった。
何だろう。
円士郎は何かを隠している。
やっぱりもやもやを抱えたまま、午後になって、
そして今日も、遊水という名の金魚屋さんがやって来た。
雨に濡れるカキツバタの向こうから現れた彼は、今日は天秤棒を持っていなくて、代わりに傘を差していた。
「今日は金魚の様子を伺いに参りました」
そう言う遊水に、私が今度は変わりなく元気に泳いでいると告げると、
「そいつは良かった。ところで、知っていますか?」
彼は再び、不吉なその言の葉を口にした。
「例の辻斬り、昨晩もまたあったようですぜ?」