恋口の切りかた
私は、不安で堪らなかった。


その不安の正体が何なのか、自分が何を危惧しているのか

それは、もはやハッキリとわかってしまった。



そんなワケない。




辻斬りの犯人は円士郎じゃない──!!




気がつけば頭の中で必死に否定している自分がいた。

こんな否定を繰り返すこと自体、
こんなことを考えていること自体、
こんな疑念をわずかでも抱くこと自体が、彼への酷い侮辱だ。

そう思ったけれど──


以前、人を斬ることに対して円士郎が見せた執着と、

あのギラギラした異様な目。


どうしても、それらが私の頭の中をぐるぐると巡った。
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