恋口の切りかた
満月の晩だった。

円士郎が、いつどうやって屋敷を抜け出しているのかわからなかったので、私は彼の部屋の脇にある空き部屋に身を潜めて、戸の隙間から円士郎の部屋の入り口を見張ることにした。



どのくらいそうしていただろう。

ひょっとしたら今日は出かけないのかもしれない。
そう思い始めた頃だった。


すうっと、円士郎の部屋の障子が開いて、中から円士郎が出てきた。
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