恋口の切りかた
私は息を殺す。


円士郎は、いつも町に遊びに行く時の着流し姿ではなく、道場の稽古着姿だった。
腰には本差しと脇差しの二本差し。

正装でもないし、遊び着でもない。
明らかに、おかしな格好で──


そしてそれは、

泣きたくなるくらい絶望的に

私の恐ろしい想像にはそぐう、動きやすさと戦いやすさを重視した格好だった。



手が震えて、決心が揺らいだ。
後をつけるのをやめようか、という気になる。

だって……

だって、もしも後をつけて行って……
彼が見ず知らずの人を理由もなく斬る場面に遭遇してしまったら──私は──

どうするのだろう。


どうしたら、いいんだろう?
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