恋口の切りかた
瞳から優しい色が消え、円士郎は目つきを険しくした。

「──何で今、そんなことを聞くんだ?」


私は、布団の中でぎゅっと、震える両の手を握りしめた。

「そうだね……何で……かな」


円士郎は私の質問の真意を考えあぐねている様子だったが、

少し黙り込んだ後、
「俺はもう十七だ」と、口を開いた。

今度は私が解釈を持て余すような答えだった。

「武士の子で、十七だ」

それが──人を斬りたいか、という質問の答えにどう結びつくのだろう。
私は彼の言葉の続きを待った。


「世が世なら、戦で初陣を経験してる歳だ──人を斬ってたっておかしくねえ」


ああ、そういうことなのか、と私は円士郎の思考が少しわかった。

円士郎がこだわることは、私の発想の中にはいつもなくて──それは一緒に暮らし初めても変わらなかった。

やはり私と円士郎では生まれ育った環境、身分が違うからなのだと、
こういう時に私は思い知らされる。


「お前は、十二で六人も斬った。親父は──初めて人を斬ったのは、十の時だとよ」

私は驚いた。
自分の話はともかく──父上の話については、これまで全く知らなかった。


「なのに俺は──四年前のあの夜、結局誰も斬れなかった」


円士郎の言う「あの夜」とは、私が堀口を斬って陰謀に巻き込まれた、あの夜のことだろう。

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