恋口の切りかた
円士郎は、何か暗いものを湛えたような、薄い笑みを浮かべた。

「これで、答えになるか?」

そう言って私を見下ろす円士郎を見つめ返して、私は震える声で尋ねた。


「辻斬りで殺された人たちは……みんな、死んでも仕方がないような……悪い人だったんだよね? そうだよね?」


私のすがりつくような問いかけに、円士郎は「お前も怖いこと言うよな」と失笑し、
そして、

「いや」

と、私の期待した答えをあっさり粉砕して頭を振った。


「どいつも殺されて文句言えねえ程の悪さはしてねえよ」


そんな──。
私は希望を絶たれて愕然とした。

なんで……なんで、そんなこと言うの?



「その流れで今度は辻斬りの話かよ」

円士郎はそう言って、もともと鋭い目を険悪に細めた。


「遊水の野郎か」

円士郎の口から断定的に放たれた名前に、私は一瞬びっくりして──
すぐに、昨日の晩円士郎と混血の金魚屋が一緒にいたのを思い出した。


「奴から何を聞いた?」

円士郎は詰問するように語気を強めた。


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