恋口の切りかた
「なに……? なんで? あの人、どういう関係があるの?」

再び泣きそうになりながら私がそう言うと、
円士郎は勢いを殺がれたように、やや困惑気味な顔になり──

「奴にも同じことを聞かれたぜ」

ポツリと言った。


「人を斬りたいか、ってな」


私は大きく目を見開いた。


「斬りたけりゃ、相手を用意するとよ」

体の真ん中が冷えていくような感覚だった。


「それで──エンは何て答えたの?」

「んー?」


円士郎は自嘲した。
暗い、笑い方だった。


「人間失格の答えを返した」


それは──


「お前と同じ場所に立ちてえと思ったからだ」

言葉を失った私に、円士郎の言葉と真っ直ぐな視線が届いた。


恐ろしいほどに──
これが偽りのない円士郎の本心なのだと、私にはわかってしまった。

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