恋口の切りかた
三、千人斬り咎人
【剣】
会話が途切れて──ちょうど中間が、「円士郎様」と言って何事かを伝えに来た。
いつの間にか、陽は高くなっていた。
「遊水様がお見えです」
「噂をすれば、か」
中間の言葉に円士郎が頷いて──私はびくりと身を固くした。
遊水。
今の話だと──円士郎に、人を斬ることを唆した張本人だ。
最近円士郎が遊水とよく連れ立って出かけていたのも、全て……
「ちょっと行って来る」
「──っやだ!」
立ち上がった円士郎の着物の袖を、私は必死で掴んだ。
「やだ! 駄目だよ! エン、行かないで──」
そんな、円士郎に辻斬りをさせるような人と円士郎を会わせたくない。
私があの人を目に留めたから──
私があの人から金魚を買ったから──
金魚なんか、飼わなければ良かったと思った。
「留玖……?」
私に袖を引っ張られて、円士郎が動きを止める。
「金魚屋さんには帰ってもらってよ! もう会っちゃ駄目だよ、エン──」