恋口の切りかた
私がじーっと顔を見つめていたら、円士郎は赤い顔のまま横を向いて、

「ったく、お前な……いきなり真顔で……焦るだろうが」

ぶつぶつと、よくわからないことをぼやいた。


「へ? なに?」

「──っお前にそういうこと言われたら、どこにも行けねえだろうが!」


怒っているのとも違う様子で、円士郎はそんな風に毒づいた。


きょとん、とする私を見て、円士郎は赤い顔のまま大きく溜息をつき、気を落ち着けるように何度か首を振った。



「ただし、遊水には会うからな」

「えっ……」


私は不安になる。


円士郎は、心配すんなと言って

やっぱり優しく私の手を握り、中間を振り返った。


「庭に通せ。ここから留玖も一緒に会う」
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