恋口の切りかた
私のこの部屋も庭に面していて、障子を開ければ庭を囲む廊下に出る。


ほどなく障子が開いて、庭に畏まった遊水の姿が見えた。


おや、と私と円士郎の様子に遊水は目を丸くした。

「これは──なかなか焼ける図ですね」

円士郎に抱き寄せられたままだったので、私はちょっと恥ずかしくて頬が火照るのを感じた。

対照的に円士郎の顔色はいつもどおりに戻っていて、彼は平然と「だろ?」と言ってふふんと笑った。

「今日は、おつるぎ様はお加減でも?」
「ああ、風邪だ」

円士郎が答えて、──続けて言った。


「だから今日はやめだ」


その言葉を聞いて、私の肩が強ばる。
一瞬の震えが伝わったのか、円士郎は肩に回した腕にぎゅっと力を込めてくれた。


遊水は顔をしかめた。

「やめ、ですか」
「ああ、やめだ」

無意識にまた円士郎にしがみついていた私を見下ろして、円士郎は何やら嬉しそうな顔になって、

「こんな状態の留玖を放って行けねえ」

と、先程と似たようなことを言った。


遊水はしばらく私たちを眺めて、更に渋い顔をした。

< 379 / 2,446 >

この作品をシェア

pagetop