恋口の切りかた
その後──

胸の中に黒い塊を詰め込まれたように、私は不安でいっぱいで、


「少し寝ろよ」

と、円士郎は言ってくれたけれど、少しも眠ることができなかった。


代わりに、円士郎がどこにも行かないようにずっと円士郎の手を握っているつもりだった。

でも──




いつのまにかうとうとしてしまったらしい。

微睡んで
目を覚ましたら、辺りは暗くて

跳ね起きた私のそばに、円士郎の姿はなかった。



九ツの鐘が遠く聞こえた。

刻限は既に深夜になっていた。
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