恋口の切りかた
男が振り下ろす刀に──



脳裏に焼き付いた遊水の動き。
それを思い描きながら、

私は無我夢中で、
自分でも無意識に、



横から拳を叩き込んだ。



打ち下ろされる刀の側面を殴った形だ。
これで刀の軌道を変えるつもりだった──


──が。


「馬鹿な──」

遊水が愕然とした声を出して、



真っ二つに折れ飛んだ刀の先端が、回転しながら木製の橋に突き刺さった。




私が拳を打ち込んだ刀は、見事にそこからへし折れてしまっていた。

まさか折れるとは思っていなかったので、自分でも少し驚いて──



「このガキ!」

男の怒声と同時に体に衝撃が走り、私は橋の上を転がった。
< 405 / 2,446 >

この作品をシェア

pagetop