恋口の切りかた
【漣】
「ん? ああ、まあな」
俺はうなずいた。
確かにこの辺りも、うちの家の知行所だと聞いた気がするな。
そんなことを考えていると、
ひえっ! と、トウ丸はこちらが驚くような声を上げた。
「と、とんだご無礼をいたしました!」
トウ丸はいきなりひれふした。
「ごめんなさい! 許して下さい!
ゆ、ユウキ様のお子さまだなんて──知らなかったんです!」
せっかくはたいた着物をまた砂だらけにして、トウ丸は謝った。
「……新鮮な反応だな」
踏みつぶされたカエルみたいにペッタンコになっているトウ丸を見下ろして、俺はつぶやいた。