恋口の切りかた
「平気なのかよ?」
「はっ」

遊水は、いつもに増して蒼白になった顔を月光にさらして嘲笑った。

「平気そうに見えるかい? こいつは傑作だ。
そんなに平静を装うのが巧いんなら、俺は役者にでもなるかね」

「……平気そうじゃねェか」

軽口を叩く遊水に、円士郎は鼻を鳴らした。


もちろん、平気なわけなんてなくて──
遊水の状態は見るからに危険で、さっきの私以上の完全なる強がりだということは明白だった。

それは円士郎にも伝わっただろう。


「すぐに終わらせてやるから、それまで生きてろよ?」


円士郎は小さくそう告げて、

刀を構える侍と、倒れたその仲間と、そして絶命している左内を見比べた。


「そこの浪人は俺の獲物だったんだよ……それを──クソ!

てめえらが──、
江戸から東海道、京から今度は中山道……
最近、街道沿いの宿場町なんかを転々としながら出没してたっていう辻斬りか?

まさか二人組──いや、忍だかなんだか入れて三人か──
辻斬りの下手人が複数犯だったとは思わなかったぜ」

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