恋口の切りかた
遊水の話では、不可解な点は他にもあったのだと言う。

刀を抜いて応戦しているにも関わらず、殺された死体は全て背に刀を受けて絶命していた。
正対した相手を前に、背中に太刀傷を受けるとは考えづらい。

そこで死んでいる左内の死体を最初に見た時、私が感じた違和感の正体もまさにこれだった。


「だがそれも、二人組以上の人数だったんなら納得だ」

遊水の言うとおりで、

おそらく今円士郎と睨み合っている侍──この男が相手の動きを正面から止め、
その隙にどこかに隠れていたもう一人──遊水にやられたそこの男あたりが背中から斬りつける。

こういうことだったのだろう。

正面のかなりの使い手を相手にしている時に、背後から別の者に斬りつけられては、いくら達人でもひとたまりもない。



「目的は何だ? 腕試しのつもりか?」

円士郎が不可解そうな表情を浮かべたまま、侍に尋ねた。


腕試し──それも何か違う気がする。
三人がかりで相手を仕留めて、腕試しも何もないだろう。



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