恋口の切りかた
「千人斬り──だと?」
円士郎が、侍の放った言葉を繰り返した。
千人斬りって──
私にはそれは、酷く非現実的な
そして狂気じみた響きにしか聞こえなかった。
「てめえ、何か重病(*)でも抱えてんのか?」
そうは見えねえけど、と円士郎は
頭のてっぺんからつま先まで侍を眺めて、訝るように言った。
「私ではない」
「……どういうことだ?」
円士郎のその問いに、侍は答えなかった。
答えずに、刀を振りかぶって──
無言で、円士郎に斬りかかる。
「む──!?」
繰り出された斬撃から身を捻って刃をかわし、侍から距離を取って素早く辺りに鋭い視線を送った円士郎を見て、侍はやや驚いた表情を浮かべた。
(*重病:当時は千人斬りを達成すると難病が治ると言われ、願掛けは主な目的)
円士郎が、侍の放った言葉を繰り返した。
千人斬りって──
私にはそれは、酷く非現実的な
そして狂気じみた響きにしか聞こえなかった。
「てめえ、何か重病(*)でも抱えてんのか?」
そうは見えねえけど、と円士郎は
頭のてっぺんからつま先まで侍を眺めて、訝るように言った。
「私ではない」
「……どういうことだ?」
円士郎のその問いに、侍は答えなかった。
答えずに、刀を振りかぶって──
無言で、円士郎に斬りかかる。
「む──!?」
繰り出された斬撃から身を捻って刃をかわし、侍から距離を取って素早く辺りに鋭い視線を送った円士郎を見て、侍はやや驚いた表情を浮かべた。
(*重病:当時は千人斬りを達成すると難病が治ると言われ、願掛けは主な目的)