恋口の切りかた
「……刀を合わせんか」

「ったりめーだ! 毒手裏剣打ってくる奴がいる状況で、自分の武器を殺す馬鹿がいるかよ」

ほう? と、感心したような声を漏らす侍の前で、円士郎は慎重に周囲から何の攻撃もないことを確認し、再び刀を構える。

その姿を見て、私は今さら気が付いた。


刀を握る円士郎の服装は、昨日私が後をつけた時の稽古着ではなくて、
かといっていつも町に出かける時の遊び着でもなくて、

何故か昼間と同じ部屋着だった。


腰には一応、二本差しの姿だけど……どういうことなのかな?



円士郎を眺めていた侍はふむ、と低く呟いた。

「お前もかなりできるな。
見たところまだ若い──元服後間もないようだが、随分と実戦慣れした動きだ」


それから侍は遊水にやられた仲間の男がぴくりとも動かなくなっているのを見て、溜息を吐いた。

「死んだか」

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