恋口の切りかた
私は驚いて、遊水の顔を見た。

遊水はそうなることがわかっていたように、黙って自分が仕留めた男の死骸に視線を注いだ。

もっとも、毒を受けた彼自身も
いつ橋の上に転がる二つの死体の仲間入りをしてもおかしくないほど、蒼白な顔になっている。


そんな遊水の様子と、円士郎と私を順番に見やって、
侍は何を思ったか、構えていた刀を下ろした。



「私は武州浪人都築小一郎という者」


男は唐突に名乗りを上げ、正体を明かした。


「都築──?」

遊水が、その名前を聞いて小さく反応して、



そして、

続けて都築という男の口から飛び出したのは、とんでもない提案だった。



「どうだ、死んだこやつの代わりに、お前たちのうち誰か──もしくは全員でも良いぞ?

私の千人斬りを手伝わんか?」

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