恋口の切りかた
「頭上げろって」

俺はトウ丸の手を引っぱってむりやり起こした。


「オレだってさっきお前ぶんなぐったんだし、おあいこだろ。

お前、その汚ェ着物これ以上汚してどうするんだよ」


「お優しいお言葉、ありがとうございます」


トウ丸は俺に引っぱられて、恐る恐るという感じで立ち上がってそう言った。


「やめろよ、照れるだろ」

俺はむずがゆい気分でそっぽを向く。


普通のことなのかもしれないが、

あの親父の子供だからだとか家名とか、
そういう理由でこんな態度を取られると、なんだか──

──自分の行動がともなっていないのに褒められているようでおちつかない。


「オレは尊敬されるような人間じゃねえしよ」
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