恋口の切りかた
遊水は懐から何か──印籠のようなものを取り出して、忍に見せた。


「護身術に毒消しに……用意の良いことだ。

常日頃から斬殺や毒殺の危険に備えなければならぬほど、金魚屋というのは物騒な仕事か?

裏で何をしているのか知らんが、ただの庶民ではないな」


遊水は辻斬りや他国の家中についてまで、詳しい情報を持っていた。

それに、場慣れしたあの動き──


この忍の言うように、私もこの人がただの物売りだとは思えなくなっていた。


「その薬は、見事に我々の邪魔をしてくれた貴様らに敬意を表して、というところだ」


忍はどこか諦めの混じったような、苦笑しているかのような空気を漂わせてそう言った。


「それに──」


忍は倒れて動かない都築を見つめた。



「あの時はああ仰ったものの──都築様とて俺がこうすることを望んでいよう」


私たちも、都築の死体を見る。


「なんでお前ら、千人斬りなんかやってたんだ?」


円士郎が、
都築からは最後まで答えの得られなかった問いを、忍の男に対して繰り返した。
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