恋口の切りかた
俺はまた衝撃を受けた。


この時のトウ丸の言葉はこの先もずっと、

俺の心の中に

長く

深く

刻まれることになる。



初めて思った。


あれ?

ひょっとして、


俺が自分の名前や家名を出しただけで、

尊敬されるどころか農民や町人にまでこうもしぶい顔をされるというのは……



俺が、親父や自分の家の風評までおとしめている、ってことになるのか?


後になって思えば、

ひょっとしておとしめているどころではなく、まさに思いっきり地に落としていたのだが。



トウ丸の大きな目でじっと見つめられて、


「わかった……すまん……」


俺は気圧(けお)されるように、思わずそう言っていた。
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