恋口の切りかた
「知ってどうする?」

「どうもしないさ。
ただ知りたいだけだ。

……改易は、この国や結城家にとっても他人事じゃねえしな」


円士郎のそんな言葉を聞いて、いつかりつ様から言われたことを思い出した。


改易となった家中の者が辿る道は──悲惨なものだと。



忍は、ほんのわずかだけ冥黙して、口を開いた。


「都築様には、難病を患う母君がおられた」


遊水が、その話に反応するかのようにぴくりと肩を震わせた。


「御家が取り潰しになり、家中のものは皆、路頭に迷い、

都築様もまた、病の母君を抱えて明日食うにも困る身となり──

当然、薬代もままならず、母君の容態は悪化の一途を辿った」

「まさか、それで──」

「そう、それでだ。

追い詰められた都築様は、病治癒の願を掛けて千人斬りに手を染めた」


円士郎に頷いて忍はそう言った。



「あんたは、なんで都築に手を貸してた?」

「俺は元々、都築様の配下にあって家中に仕えた忍だ。
都築様には個人的な恩義もある。

例え国が滅びたとしてもその忠義を全うするのが己の決めた生き方──

故に、今宵まで都築様をお助けして参ったが……
たった今それも終わった」
< 450 / 2,446 >

この作品をシェア

pagetop