恋口の切りかた

五、彼と彼女の心

【剣】

「……都築という国家老は、
民を思い
主君への諫言を憚らず、
真の忠臣と誰もが認める男だったと聞いている」

遊水は、忍が投げてきた薬を一息に飲み干して顔をしかめた。

「それが──こんな末路とはね……」

あの忍は生きているのが不思議だと言っていたが、その顔色はますます蒼白になっていて、呼吸も荒い。

「武士ってのもつくづく因果な商売だねェ、エンシロウサマ」


そう言って、遊水は私と円士郎を振り仰いで、

「なかなか焼ける図ですね」

と、昼間も聞いたセリフを繰り返して、こんな状態なのにニヤリと笑った。


私は慌てて円士郎から離れようとして、

でも円士郎は都築の死体を怖い顔で睨んで、何事かを考え込んでいる様子で、私の肩から手を離してくれなかった。

「あ、あの、エン!」

私が赤くなりながら声を上げると、ようやく気がついたように円士郎は私を見た。

「……ん? ああ──悪ィ、留玖」


どきどきしながら離れて、私は何とか気を落ち着けようと深呼吸した。


「遊水、今の忍はあんなこと言ってたけど、お前……」

一方の円士郎は、遊水を見下ろして心配そうに眉間に皺を作った。
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