恋口の切りかた
遊水は弱々しく笑って、

「持ち歩いてる毒消しが運良く効いたようだが……

しかしあの忍が言うとおり、
これも単に毒を抑えてるってだけだろうぜ。

解毒って感じはしないし
時間が経つほど酷くなってきてやがる……」

「お前、その持ち歩いてる毒消しってのが、何の薬草から作られた薬か言えるか?」

「あ?」

円士郎の質問に遊水は不思議そうな顔をした。

「一応把握してるが……?」

「よし、さすがだな。
じゃあそれを、これから連れてく本草学者と虹庵先生のところで伝えてくれ」

「──ああ、成る程ね」


遊水が頷いて、それから私を見上げた。


「おつるぎ様も大丈夫ですか?
さっき、思い切り腹を蹴られてましたが……」

「なに!?」

円士郎が大声を出して、握っていた刀を放り出して両手で私の両肩をつかんだ。


「留玖、お前も怪我してるのか? 腹を蹴られたって、どの辺だ?」

円士郎は酷く狼狽した表情で、私の顔を覗き込んで聞いた。

「あ……だ、大丈夫だよ」

円士郎が私のことを凄く心配してくれているのが伝わってきて、
私は嬉しくて、

えへへ、と微笑んだ。


「もう痛くないし、それに小さい頃から、エンに蹴られたり殴られたりしてたから慣れてるし」


私が円士郎を安心させようと思ってそう言うと、

「円士郎様、あんたおつるぎ様を蹴ったり殴ったりしてたのか!?」

「う……!」

遊水が目を剥いて、円士郎が固まった。


「そ、それは、そもそもこいつのことを男と勘違いしてたから、勝負でだな……」

円士郎はもごもごと言い訳をして、それから大きく息を吐いた。
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