恋口の切りかた
そっか、と言って円士郎は私の頭をポンポンと軽く叩いた。



「……そいつは良かった。
いやあ、何より。
まったく結構なことで。

それじゃ、いい加減こっちにも医者を紹介してもらえませんかね」


皮肉たっぷりの遊水の声で、私と円士郎はハッとなった。


「お……おお、悪ィ遊水」

慌てた様子で円士郎が向き直り──



私たちは橋の上に三つの死体を残したまま、その場を後にした。


円士郎は遊水を担ぎ上げて、
私には、手を貸さなくて大丈夫かと確認し、
多少ふらつくものの、吐気や頭痛は嘘のように治まっていた私は大丈夫と頷いて、

私たちは、
虹庵と──あと円士郎の知り合いだという、本草学者とやらの所へと急いだ。


円士郎の話では、かなり変わり者で面白い学者先生なのだそうで、
その人も虹庵の家のすぐ斜向かいに住んでいるのだとか。

ほどなく、私たちは一軒の長屋の前に辿り着いた。

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