恋口の切りかた
女の人は手にしていた包丁とクッタクタのニワトリさんを台所に置いて、
土間の水瓶から杓で水を汲んで両手を洗い流し、
板の間に散乱していた絵の道具やら何かの書物やらを乱暴に部屋の隅に押しやって、場所を開けた。
「悪いね、夜中に突然」
それを見ていた遊水がかすれた声で謝って、
「ご、ごめんなさい! エンが戸を……」
私も壊れた戸口を見て、慌ててペコリと頭を下げた。
すると女の人はおかしそうに、鈴を転がすような声を立ててくすくす笑った。
「ふふ……なんだ、あいつの知り合いだから皆、非常識なのかと思ったら、君らは意外とマトモなようだ」
私と遊水が顔を見合わせると、女の人は遊水に自分で動けるかと聞いて、
「おい、そこの小僧。君も手を貸して、ここに寝かせてやりたまえ」
と、物を避けて開けた板の間の場所を指さし、私に言った。
小僧と呼ばれてちょっとムッとしながらも、
土間に突っ立っていた私は、草履を脱いで板の間に上がって、
言われたとおり、遊水に肩を貸して板の間に寝かせた。
女の人は灯りを持ってきて、横になった遊水を覗き込み──
「へえ……!」
と、遊水が声を上げた。
土間の水瓶から杓で水を汲んで両手を洗い流し、
板の間に散乱していた絵の道具やら何かの書物やらを乱暴に部屋の隅に押しやって、場所を開けた。
「悪いね、夜中に突然」
それを見ていた遊水がかすれた声で謝って、
「ご、ごめんなさい! エンが戸を……」
私も壊れた戸口を見て、慌ててペコリと頭を下げた。
すると女の人はおかしそうに、鈴を転がすような声を立ててくすくす笑った。
「ふふ……なんだ、あいつの知り合いだから皆、非常識なのかと思ったら、君らは意外とマトモなようだ」
私と遊水が顔を見合わせると、女の人は遊水に自分で動けるかと聞いて、
「おい、そこの小僧。君も手を貸して、ここに寝かせてやりたまえ」
と、物を避けて開けた板の間の場所を指さし、私に言った。
小僧と呼ばれてちょっとムッとしながらも、
土間に突っ立っていた私は、草履を脱いで板の間に上がって、
言われたとおり、遊水に肩を貸して板の間に寝かせた。
女の人は灯りを持ってきて、横になった遊水を覗き込み──
「へえ……!」
と、遊水が声を上げた。