恋口の切りかた
「もっとも、忍としてではなく──都築様の御遺志に従いこのまま中間として働こうかとも考えていたが」


あんぐりと口を開けた俺に向かってそう言って、
男は少し顔をしかめた。


「結城家では中間を雇うのに武術の試験でもするのか?」

「……あァ?」

「晴蔵様からいきなり真剣で斬りつけられて、俺が避けたところその場で採用だと告げられたが──あれは普通死ぬぞ」

「親父の剣をかわしたのか……!?」


俺はようやく、男の上から足を退けた。

こいつが今、ワザと俺に蹴られたのだとわかったからだ。

親父の剣をかわすような奴だとすると、
その気があるならば、とうに俺も留玖も殺されていただろう。


「てめえ、名は?」

パンパンと軽く着物をはたいて、男は立ち上がり、

「宗助と申します」

と再び頭を下げた。


「どうぞこれからよろしく」


そう言って、

あっけにとられている俺たち三人の前で、


彼はなかなか男前のその顔に、初めてにこやかな笑顔を作ったのだった。


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