恋口の切りかた
なにしろ、武士の男児が大人になった証としてもらうその「諱」。

私は平司と一緒に、本来男にしか許されないそれを父上からもらったのだ。



女の子には、それはちょっと有り得ないことで──


どういうことなのかと仰天する母上に、

「ああ、我が家にはもう一人男の養子がいると届けてあったのでな」

と、父上は何でもないことのように言った。

「もしも道場を留玖に継がせることになった場合も、これで体裁上は何の問題もないというワケだ」

「な──」

しゃあしゃあと言い放った父上の態度に、母上はしばし絶句して


「晴蔵殿っ!! 何を考えておるのですか!」


凄い剣幕で父上に食ってかかったのは言うまでもない。


父上に聞いたところ、私が男の格好をするようになった時にこれを考えついたらしくて、


つまり私は、

男としてと
女としてと、

結城家の二人分の養子って扱いになっているみたい……。
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