恋口の切りかた
男の養子として届け出てあった名前は刀丸。

つまり私の昔の名前だった。


……確かに男の子っぽい名前だって、円士郎も言ってたもんなぁ。


そして、私が父上から戴いた諱は


──「成剣」。


結城成剣というのが、私の男としての名前だった。

通称は虹庵が昔名乗っていたという「十兵衛」をそのままもらって、結城十兵衛。


そして、男として元服したということは

私が、円士郎や冬馬と同じように
正式に帯刀を許されたということだった。



母上は目を吊り上げて、鬼女の如くの面相で怒り狂っていたけれど──

うう……怖かった。


でも円士郎は、二本差し姿の私を見て

「おお、似合うじゃねえか!」

と喜んでくれて──えへへ、ちょっと嬉しい。


結城家の道場に奇妙な訪問者が現れたのは、

私と冬馬のそんな元服が済んで、
十七となった睦月のある日のことだった。

< 509 / 2,446 >

この作品をシェア

pagetop